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家の電子レンジが壊れました…orz
なんかこう、ただならぬ音を立ててぶーんって…
畜生ココア飲めねえじゃねえかっ

セルファラでお話書いてたら思いのほかハマって時間がアーッ
なので今日はこの辺で失礼しますはい
続きに置いておきます^q^

いつものことながら長くて読みにくいです、きちんとまとめた文を書けるようになりたい
エロは書こうと思ったら時間が無くなったので無いです(笑)






遠く、輝く月を見つめながら、事務所の椅子に体育座りをするファラダが、近寄ってくる人影に気づかなかったのは物思いに耽っていたからではなく、単に見とれていたからだ。
「何をしているんですか」
と、声を掛けられて飛び跳ねるように椅子から降りたのは、その椅子が声の主の指定席だったからだ。
「す、すみませんっ…その…月が、綺麗だと思いまして」
謝罪を口にするところまでは視線を泳がせていたファラダだが、ちょっと恥ずかしそうに窓の外を見た。それに習って夜空を見るセルジュに、静かに問う。
「夜は静かでいいです、月あかりも綺麗ですし…心が落ち着くと思いませんか?」
一瞬の疑念が、脳裏を貫く。
「あなたらしくないですよ。」

―――人の魂に焼きついた性質というのは、たとえそれを形作る記憶が消えようとも、薄れないものなのだと彼を見て思います
彼との初対面は、もうずいぶん久しい夜のことでした
それはそれは、月の大きな夜…その光を背に受けて、階下に佇む俺を見下ろしながら、彼は言いました

「こんばんは、探偵さん。」
来客を知らせるベルの音の数秒後、探偵事務所の扉はその新しさを物語るように静かに開いた。旧式の年季の入ったストーブの立てる音のほうがよっぽど騒がしい。室内の温かな空気を一掃するように豪快に開いた扉から顔を出したのは、ふくよかな印象の婦人と、夜と言えなくもない薄闇だった。
「ああ、あなたでしたか、こんばんは…今日はどういったご用件で?」
閉められた扉の右奥、これもまた新しさの残るデスクの向こうで、煙草を吹かしながら腰かける髪の長い探偵は、名をセルジュと言った。まだ若いだろうに、態度や雰囲気だけはベテランの名探偵のようだった。
「ほほほっ、いやねぇ、大したことじゃぁないのよ。」
そう言いながら慣れた動きでソファーに歩み寄り、静かに腰かけた貴婦人は、この探偵事務所の常連さんだった。とはいえ、彼女の言う「大したことじゃぁない」は本当に大したことじゃないので、相談料やその他諸々の手数料を奮発してくれる気前のいい客程度の認識だ。
しかし、夫を亡くしてから愛猫と二人きりだというこの婦人にとって、この事務所に来ること自体が何かの解決になっているのかもしれない。実際に今まで依頼されたのは、愛猫が外へ出かけたきり帰ってこないから探してほしいだとか、近所で騒ぐ若者がうるさいから原因を突き止めてやめさせてほしい程度の事だった。結局、猫は外で恋仲の猫を追いまわしていたという事実に笑い、家庭の事情で散々騒いでいた若者とは、今では相談に乗ったりお茶をしたりという現状に落ち着いているらしい。
「大したことじゃないのは承知してますよ…今度はあれですか、猫の浮気相手探しか何かですか?」
「いいぇ違うのよ…ちょぉっとお願いしたいことがあって、ね。」

気の良さそうな貴婦人が言うにはつまりこういうことだ。
彼女の友人の孫がある日突然いなくなったという。もちろん警察にも連絡したが、未だに発見されていない。その子の他にもその日を境に姿を消した子どもが複数居るということだが、警察は、仲のいいグループでお泊まり会か何かをしているのだろうという見解を崩さないでいるらしい。ちょうど休みの多い暮れの時期だということもあり、捜査に踏み切ろうとはしないのだろう。
「でねぇ、ここだけの話、子どもが居なくなった一帯では、夜にピエロに扮した人攫いが出るって噂なのよ。」
「へえ…それで、私は何をどうすればいいんですか?」
奥のデスクから、婦人の向かい側のソファに移動したセルジュは、紅茶の入ったカップに口をつけながら相槌を打った。もちろん婦人の分を含め自分で淹れたものだが、そういうことに向いてない自分はやはりお手伝いか何かを雇うべきかと思うのだが、事務所の財政上望ましくないのが現状だ。
「だからね、警察の動くような、なんかこうすっごい事実をつきとめてきてほしいの、お願いできるかしら?」
解決とまではいかないが、警察を動かすための事象の捜索程度ならいつものちょっとした探し物と同じだろう。婦人の「報酬は弾むわよ」という言葉に、セルジュは頷かないわけにはいかなかった。

古風なレンガ造りの家が目につく町外れ、笛吹き男の童話を彷彿とさせる噂に相応しいような古い石畳の景色。高低差を利用した街並みには坂や階段が多く、その芸術的とも言える造りには死角が多く存在していた。
そんな死角の谷間に位置する小さな広場に、セルジュは立っていた。よく小さな移動サーカスの一団が来るというその広場は、噂のピエロが笛の音を響かせるには丁度良いステージのように見えた。きっとサーカス団もこの広場に立ち、周りを取り囲む階段には多くの子供が笑顔を輝かせて座っていたに違いない。
「さてと。」
さっさと用事を済ませて温かい事務所に戻ろうと思った所で、冷たい風が広場に吹き抜けた。それはセルジュにも容赦なく吹き付け、足取りを急かす。とっさに月の光が差し込むのと反対側へ体ごと振り向いたのは、風下で笛の音が聞こえた気がしたからに違いないが、影のさす方には何もあらず、捜索の足掛かりのなさにため息をつくばかりだ。
実際につこうとしたのだが、そのために吸った空気は別の動作に使われた。
「誰ですか、こんな時間に出歩くなんて、危ないですよ。」
背後から伸びた長い影を、言葉が鋭く射止めた。その陰の結ぶ先へ視線を向ける。階段の上には、月を引き裂くように人が立っていた。
「こんばんは、探偵さん…いい夜にお会いしましたね。」
そう、彼は階下に佇むセルジュを見下ろしながら、言った。
「質問に答えなさい、あなたは誰ですか。」
碧い眼、シルクハット、銀色の髪、細いライン…そのシルエットのどれもがどこか楽しそうな空気を纏い、微笑する。道化の醸し出す雰囲気にどことなく近い、その狂気にも似た笑顔が、逆光に慣れ始めたセルジュの目を見ていた。
「さあ、誰でしょう…いいえ、誰だっていいんですよ、この素晴らしい月夜の前では。それに、どうせすぐに分るでしょうし。」
少し詰まらなさそうに語尾を濁した後、自らが背負った月を振り仰ぎ、静かに問う。
「夜は静かでいいです、月あかりも綺麗ですし…心が落ち着くと思いませんか?」
何が言いたいのか分らない、とりとめのない話は、ただひたすら聞くより他はなかった。この怪しげな彼が、危険であり安全であるように見えたのは、この次の発言を聞くまでのことに過ぎなかったのだが。
「ここで私と会ったことは、一には秘密にしてください…それでは、またお会いしましょう、セルジュさん。」
彼が口にした名は、セルジュが探偵として追っている詐欺師の首謀の名前だった。
「待ちなさい…!」
その一が彼に関係していると知るや否や、階段の上から消え去った影を追いかけるべく、駈け出した。自分でも驚くような速度で十数段の階段を駆け上がり、彼の消えた街並みを見た。丁寧にお辞儀をした彼の姿を間近で見ることは叶わず、大きな丸い月だけが、こちらを見下ろしていた。

結局、行方不明になっていた子どもたちは2日ほど経って突然帰ってきた。何があったのか聞くと、その誰しもが「サーカスを見ていた」と言う。多くの謎が残る歯がゆい事件だったが、子どもたちが全員無事だったこともあり、何事も無かったかのような平和がすぐに訪れた。
詐欺師の実態は未だ掴みきれてないが、普段善良な住民に溶け込んでいる一へ問い詰めたところ、彼はファラダと言うらしいということは分かった。一が言うには唯の友人らしいが、どのように関わりがあるのかは分らない。一気に核心へと迫る勢いはどこへやら、それからまたしばらく、平行線な捜査状況が続いたのだった。

―――そして、彼は今目の前に居ます、あの時と同様、月あかりに照らされて
記憶を失った彼は以前と印象が全く異なっていて、まるで別人のようでしたが、そばに置いておくことで限りなく真意に近づくような気がしました
それがまた別の感情を抱くことになるとは、予想できるはずもありませんでしたが

「セルジュさん…?」
これ以上月明りを見せたらいけないような気がして、ファラダの顔を両手で挟み、顔をこちらへ向かせる。今、この純粋に見つめる瞳が、どうか本物であるように。
「らしくないのは、俺のほう…ですね」
視線をそらす。一瞬、疑ってしまった自分がいた。そうさせる彼から目を背けるしかなかった。そしてそれは、拗ねている様にも、疎んでいる様にも見えた。
そんなセルジュに、どうしようもない不安を感じて、ファラダが縋るように抱きつくと、籠った声が心臓のあたりに直接響いた。
「煙草の…臭いがします…まだやめてなかったんですね」
自然と上目遣いなる身長差でこちらを見る目は、少し不服そうだった。
「百害あって一利なしって言ってるじゃないですか…もう…」
そう言ってまた顔をうずめる。これでも年齢は幾つか上であることに違いは無かった。
「あの双子の前では吸ってないんですから、いいでしょう。」
許しを請うりながら、その実答えを自らの唇で塞ぐ。絶対的な口付け。
「ん…っ」
疑念を、不安を、不服を、心細さを、一切拭い取るような深い口付け。
待つことの苦手なセルジュの性格そのままの、強引な動きが、月明りの届かない寝室へと引き込んだ。

―――こうして夜が来るたび、月に心変わりしてしまわないように、彼を縛り付けるのです

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12/03 月海
なんかもしかしたら私が生まれてくる前の前世の私はらぎさんが作られていく中で死んでった細胞さんの一つなのかもしれないと思いましたよ。『月』は今書いているアレでもちょっとしたサブテーマ(?)みたいなのにしてあったので何か運命を感じましたハァイ!今後も、お借りさせていただきますm(_)m
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